コラム

2025.09.05

すべて道志村で循環できる農業にチャレンジしたい|英工房・佐藤央企さん

道志村・村民

道志村に移住して農業をはじめた佐藤央企さん。季節を感じ、土の状態を常に見ながら、ぬいた雑草をこやしに無化学肥料無農薬でハーブを育てる。ゆくゆくは道志村の中のものだけで循環ができるような農業をやりたいと奮闘中。現在ハーブはハーブティーとして英工房(はなぶさこうぼう)名義で道の駅などで販売している。村内のブックカフェもくめ書店では英工房のハーブティーをそこで飲むこともできる。

すべて道志村で循環できる農業にチャレンジしたい|英工房・佐藤央企さん
英工房の佐藤央企さん

移住のきっかけは

ーーーまず、なぜ道志村に移住しようと思ったんですか?

道志村に来る前は東京で介護の仕事をしていたのですが、毎日忙しくて昼夜逆転生活。その生活にずっとしんどいさを感じていました。まずは生活を立て直したい。朝起きて夜寝る生活をしたい、コンビニご飯じゃないものを食べたいとずっと思ってたんです。それで介護の仕事をやめて、どうせだったらやりたいことをやろうと思いました。身体にいいものを食べたい、その生活を自分で作ってみたいという気持ちがあり、自然栽培に興味を持ったんです。そこから実家に近い道志村だったら畑をやりながら両親の介護もできるなと思い、移住を決めました。

移住のきっかけは
栽培しているハーブ

ハーブ農家になるまで

ーーー無肥料無農薬の自然栽培をしようと思ったのは身体にいいものをという思いからだったんですか?

それはもちろんありました。でももっと言うなら今の大規模で肥料農薬をガンガン使って効率よく作物を採るタイプの農業はたくさんお金がかかるんです。そのお金がなかったということも大きかった。今できる範囲でできることを考えたら、自然に無肥料無農薬でやってみようと思ったという感じです。それに道志村の土地もそういう大規模な農業には向かない小さい農地が多いので、その土地に合ったやり方をしてみようと思ったんです。

 

 

ーーー現在は主にハーブを栽培されていると思うのですが、ハーブに特化したのはなぜでしょうか?

一時期鹿児島にいたことがあって、そこで養豚の仕事をしていたんですが、そのときに農家の方にハーブはやりやすいと聞いたことがあって、さらに香りがいいこともあって、介護の世界で薬のにおいばかりかいでいて参っていたので、香りの良いハーブはいいなと思ったんです。それとインドに行った時にふれたホーリーバジルを育ててみたいなというのがあって、最初はホーリーバジルからはじめました。

 

 

ーーー道志村でハーブ栽培をはじめて何年目、そしてやってみて今どうですか?

4年になります。3年間は正直まったく何もできませんでした。失敗に失敗の連続で、どんなにがんばって種をまいても苗を植えても全滅してしまうことが続いて、いったいどうしたらいいんだろうと頭を抱えてました。でもそんなときに目の前の地面からスギナがたくさん顔をだしているのを見つけて、何もないしこれでお茶でも作ってみるかと思い、お茶作りをはじめたんです。そうしたら目の前の自然は材料の宝庫だったということに気がついて、柿の葉や笹、よもぎなどを採ってお茶にするようになりました。スギナが生えている場所は、最初はスギナしか生えない土地なんです。でもスギナは地下茎をめぐらして土を柔らかくしてくれるんですよ。そしてたくさんのミネラルを上に上げてきてくれる。それによって土がだんだん変わってくるんですね。次にドクダミやよもぎなど根が強い植物が生えて、また土をやわらかくする。そうやって土壌改良されていってようやく作物が育つ土になりました。すべての植物は意味があってそこに生えているんだと思いましたね。

ハーブ農家になるまで
農園と佐藤さん

食べ物を買うということは、自分の生きる責任を誰かに押し付けているということ

ーーー今までで1番苦労したことはなんですか?

やっぱりきれいごとを言っていてもお金は必要だってことですね。なかなかお金が入らずに支払いに頭を抱えていた時期もありました。今も農業だけでは生活が難しいので、空いている時間に別の仕事をしたりして補っています。最近は時間に余裕ができてきたので、別の仕事にも時間を割けるようになってよかったと思います。

 

 

ーーー英工房さんの今後の展開や夢などがあれば教えてください!

あまり大きいことは考えていませんが、今の生活をまず大事にしたいということ。そこから余剰を増やしてなにか人助けができるようになったらいいなと思います。少しずつ拡大はしていきたいけどあまり大きくしすぎないようにもしたいです。それから食べ物を買うということは、自分が生きるということの責任を誰かに押し付けて全部やってもらっているということだと思っていて、すべては無理でも自分で食べるものくらいは作れるようになりたいと思います。

食べ物を買うということは、自分の生きる責任を誰かに押し付けているということ
無科学肥料無農薬でハーブを育てている

道志村へ移住を考えている方へ

ーーーでは最後に道志村に移住を考えている方にメッセージをお願いします。

移住を考えている方は道志村で何かしらやりたいことがあると思うので、現実的にいろんなハードルはあると思いますが、まずやってみて失敗したら軌道修正したらいいという考えでいたらいいと思います。トライアンドエラーで自分もずっと失敗を繰り返してきて今があるので、まずはやってみること、それがとても大事だと思います。

道志村へ移住を考えている方へ
Profile

英工房 佐藤央企

相模原市出身。一時鹿児島に移住するも養豚の仕事の最中に自然農法の可能性を見出し、自ら実験するため、2018年に道志村に移住。現在は道志村で7枚の畑を借りて、30種類の野菜、20種類のハーブを育てています。畑には落ち葉と籾殻と米ぬかだけを使用し、無農薬無化学肥料で栽培しています。英工房(はなぶさこうぼう)として収穫したハーブからハーブティーを作り、販売しています。