コラム

2025.07.09

地域おこし協力隊から村の神主へ|千々輪岳史さん・美紀さんご夫婦

道志村・村民

2013年に地域おこし協力隊として道志村に移住した千々輪さんご夫婦。本業として無農薬のクレソン農家をするかたわら、道志村に神主がいないという話を聞いて、大学に通い神主の資格を取得。その後正式に村内の神主として活動されています。まったく経験もなかったところからなぜ神主になったのか、その経緯と活動の内容をインタビューしました。

地域おこし協力隊から村の神主へ|千々輪岳史さん・美紀さんご夫婦
千々輪岳史さん・美紀さん

地域おこし協力隊として道志村に移住

千々輪さんは家族で移住してきたんですよね。移住のきっかけは何だったんですか?

岳史さん)もともと子供と一緒に家族で自然に囲まれた田舎暮らしをしたいという想いが夫婦であったんですよね。里山のような風景を求めて様々な場所を訪れたんですが、なかなかこれといったところが見つからず……。さらに40歳をすぎての転職、移住は、収入が不安定になることが考えられたので、最初の一歩を踏み出すことができませんでした。

 

とはいえ、定年後の移住では年齢的にやりたいことをやることもできないんじゃないかと悩んでいたところに、道志村の地域おこし協力隊の募集の広告を偶然目にしたんです。募集の年齢はすぎていたのですが、趣味の山登りで訪れたこともある土地だったので、ダメ元で申し込んでみようと思って申し込んだら面接を受けることができて、無事に合格することができました。

地域おこし協力隊として道志村に移住
神主の岳史さん

求められて、村の神主へ

地域おこし協力隊として移住されて、すぐに神主の仕事を始められたんですか?

岳史さん)まずは協力隊での活動として、農林業への従事、村の祭りや困った人の手伝い、雪かきボランティアなどをしていました。村の事業に協力し、地域住民との交流を通じてクレソン栽培をしている方と知り合いになって、高齢化が進むクレソン農家の手伝いをしながら技術を学び、クレソン農家としてスタートしたのがまずは生活の糧となる仕事です。

 

同時に地域に神主がいないという問題があることを知ったんです。たまたま妻の父親が神主であったということがあり、役場の方から神主になることを勧められたという経緯がありました。関心もあったためやることを決めたのですが、協力隊の任期を終えてクレソンの仕事を始めていたので、冬季に二年に渡り東京の大学に通い資格を取るのは大変でした。神社の世界は世襲が多いのですが、私たちはまったく縁がなかったため、分からないことも多くて大変でした。でも妻の父親や、村で神主をやっていた方の家族の方から神主に必要な様々な道具を譲ってくださったので、すごく助かりました。

求められて、村の神主へ
村の協力を得て神主に

道志村の神主の仕事

村での神主業はどんなことがありますか?

岳史さん)年に一度の祭りや、地鎮祭、お宮参り。また、車のお祓いなどもやりますね。人生儀礼とわたしたちは呼んでいますが、一生に一度の人生の節目であったり、祝い事などをまかせていただいて、地域の方たちの気持ちに寄り添う仕事にはなっているかと思います。年末には、伊勢神宮のお札「神宮大麻」を各家庭に配布する仕事なんかもやっていますね。

 

 

道志村のお祭りにはどんなものがあるんですか?

岳史さん)お祭りには神事としての側面と、地域住民が集まる交流の場としての側面があります。1年に1度その地域の神様にお礼とまた1年よろしくお願いしますの挨拶をします。神事の後には、会食やバーベキューなどが行われ、地域住民同士の親睦を深めていますね。お神輿やお囃子なども昔はやっていたんだけれど、今はなくなってしまったところが多いですね。神楽も今は一部のみになっています。

 

 

神主をやってきて大変だったことと、よかったことを教えてください。

岳史さん)神主としての仕事を通じて、地域住民とのつながりが深まり、口コミで仕事が広がっていくことがうれしいですね。それから気になっていたところを(お祓いなど)やってもらってよかったと言っていただくと、こちらもすごくよかったなと思います。また、家庭の神棚の処分等、神道に係る地域の方のちょっとした困り事を解決することで、感謝されることにやりがいを感じます。大変なのは年末のお配りの仕事ですかね。各家庭を訪問し、古いお札と新しいお札を交換し、お祓いを行うため、時間と労力がどうしてもかかってしまいます。妻の助けを得て二人三脚でなんとかやっています。大変ですが、でも地域住民との交流を深める貴重な機会でもありますね。

道志村の神主の仕事
道志村で行われる夏越大祓式

道志村へ移住を考えている方へ

今後道志村に移住したいと思っている方へ、千々輪さんから伝えたいことはありますか。

岳史さん)道志村にはじめてくると、時々地元の方の言葉遣いや態度に驚かされることもあるかもしれません。でもそれはこの地域の普通の言葉使いであり、悪意や悪気はないのですぐに慣れます。あまり心配しない方が良いです。あと冬は思いの外寒いです。山間なので日照時間が少なかったりすることもあり予想以上の寒さを感じることがあります。寒さ対策は万全にした方が良いです。そして仕事はなんとかなりますよ。意外と村内の職もあるし、PCを使ってできる仕事ももちろんできますし、何よりここの暮らしはお金以外の価値があると思っています。思い切って道志村に移住してみると、人生の新しい道が開くかもしれません。

道志村へ移住を考えている方へ
地域おこし協力隊から村の神主へ
Profile

千々輪岳史さん/美紀さん

岳史さん:会社員生活を経て、道志村に地域おこし協力隊第一期生として、道志村に家族4人で移住。クレソン農家。神主。

美紀さん:道志村移住後、以前からのパティシエールの仕事に加え、クレソン農家、神主のお手伝い。忙しくもすべて好きなことだけやって田舎暮らしを満喫中。