道志村で見つけた、新しいプレゼン教育のカタチ|プレゼン製作所代表 内野良昭さん
2025年3月、DOSHI PROJECTによって子どもたち向けにプレゼン教室を開催した「プレゼン製作所」。これまで企業向けにプレゼン研修を行ってきた代表の内野良昭さんが、なぜ小さな村で子どもたちにプレゼンを教えるという実証実験を行ったのか? そしてDOSHI PROJECTを通して見つけた「プレゼン教育の未来」とは。お話を伺いました。

プレゼンのプロフェッショナルを育てるため、会社立ち上げへ
―――プレゼンを支援する会社は珍しいと思うのですが、まずどんなことがきっかけでプレゼン製作所を立ち上げたのでしょうか?
プレゼンを作るプロフェッショナルは世の中にたくさん存在したのですが、個人で受注するケースが多く、価格競争に巻き込まれたり、継続的な仕事に繋がらなかったりする現実に課題を感じていました。これほど重要な仕事なのに、個人が疲弊しながら仕事していることがたまらなく不満だったのです。そこで、このプロフェッショナル性を将来子どもたちの憧れる職業にするにはどうすればいいのか考え、ひとつの職業意識として成り立つ言葉が必要だなと。今までなかった“プレゼンテーションデザイナー”という言葉をつけて、プレゼンをデザインすることが仕事になることを証明しようと思いました。そこから、交渉力や自分たちの価値をアピールするためにプロフェッショナルを集めたというのがこのプレゼン製作所設立の意図になります。

DOSHI PROJECT参加で新しいビジョンを実現
―――DOSHI PROJECTへの参加を決めた理由をお聞きしたいです。
まず、子どもたちへプレゼンを教える機会を得られるからですね。また、地方展開をしていくにあたって協力いただけるということで、私たちも展開しやすいと思ったのが理由です。それと、私たちの目指したい教育の在り方が伝わる、受け入れてもらえる環境だと感じたこともポイントですね。
―――なぜ、子どもたちに向けた企画を開催しようと考えたのでしょうか?
今回子どもたちをターゲットした理由は二つあります。一つは僕らが商談をしている大人たちがプレゼンに苦手意識を持っていてプレゼンの価値をストレートに評価することが難しいことですね。もう一つは、今までのプレゼンの研修事業を通してこういうのを教えるのって大人だけでなくていいのではないかと思ったのです。いずれも“プレゼンへの苦手意識を取り除きたい”という想いに通じており、大人も子どもも対象になると感じました。これらの想いを軸に子どもたち向けの研修を行って、将来“プレゼンテーション”を楽しめる子どもたちを増やしたいなと。そんなビジョンです。
子どもたちに向けたプレゼン教室を開催
―――プレゼン教室の開催に向けた準備はいかがでしたか?
子供達へのプレゼン教室は初めてで、全くやったことのないことに伴走してもらえたっていうのが非常にありがたいですね。ありがちな研修の型にはめることなく、双方の要望をすり合わせて共同でやっていこうという姿勢が魅力かなというふうに思います。
―――実際に開催してみていかがでしたか?
プレゼン教室に参加してくれた道志村の子どもたちは、みんなのびのびとして明るい印象でした。ディスカッションの中では後輩をサポートする先輩の姿が見られていい集団だと感じましたね。実際にプレゼン教室に参加した方々からは、子供たちにとって身近な“昔ばなし”などを題材にしてプレゼンテーションを学ぶプログラムに対して、“楽しみながらプレゼンテーションへの理解が深まる”,“実践的な学びができた”と好評の声が届いています。ただ、プレゼンが役立つ身近な例として挙げた“おねだり”は全国共通の行動だと思っていたので、道志村の子どもたちにとって馴染みが薄いという点は新鮮でした。
―――参加した子どもたち・保護者からの声
実際に教室に参加した方々からは、以下のような感想が寄せられています。
・プレゼンテーションはもともと苦手でしたが今日のおはなしをきいたり体験したりして楽しそうだなときょうみがわきました。ももたろうの物語を考えて、はっぴょうすることがとくに楽しかったです。(――参加者より)
・今回は話す練習だけだったので、スライドなどを作る工夫も知りたい。(――参加者より)
・子どもたちが恥ずかしがりながらも大人や仲間の前で頑張って発表する姿が良かったです。講師の方たちの説明もとても上手で私自身も人と話すときの勉強になりました。(――保護者より)

「家庭」を「プレゼン教室」に
―――DOSHI PROJECTでの発見や今後に生かしていきたいことはありましたか?
今回のプレゼン教室を通して、家庭でプレゼン教室ができるのではという発見がありました。また、地域性なのか、道志村の子どもたちは話すのに慣れている印象を受けました。村に非常に良いコミュニティーや親子関係が広がっているのかな。そういう環境の中では、ワークショップや教室のようなものをしなくても能力的には成長していくことが期待できるのではないかなって。というのも、保護者の方ができる子どものプレゼン力を伸ばすための問いかけっていうのがあるんですよ。その問いかけを続けていくとワークショップや教室がなくても必然的に能力的に成長できると思います。たとえば、子どもが今日あった出来事を話してくれた後に、“もっと短く言ってみて”とか“お友達の反応はどうだった?”とかちょっとした気づきを与えるような質問をします。そうすると、スピーチ力だけでなくコミュニケーション能力を上げるための必須能力“要約力”を鍛えることができます。当初このプログラムを考え始めたときは日本全国にプレゼン教室を作りたいと思っていたのですが、今では各家庭がプレゼン教室になる可能性を感じました。
